最高の天ぷら屋
それは、ある秋の日の昼下がりの午後のことであった。
当時、CIAの特命を受けたと思われる某M社の陰謀により、IABPの誇る
高性能コンピュータPC9(以下実態をCIAに知られると困るので略)は壊滅
的な打撃を受けており、その修理を密かに那覇市内の某電気店に依頼していた。その日は、念願の修理完了日であり、IABP輸送協力隊による秘密運送作戦
が敢行されているさなかに、それは発見された。
那覇市内からIABP本部のあるN村までは、海洋博開催の際に作られた「実
質的高速道路」を経由することになる。しかし、某電気店からその「実質的高速道路」に入るにはどうしても「開南地
獄の渋滞街道」(命名者不明)を経由せざるを得なかった。渋滞とはすなわち車が動かないことである。つまり、我々は滴の襲撃を受けやすいもっとも危険な状況にさらされたことに
なる。油断は禁物、我々は目をこらして、車の周囲に怪しいものがないか、探し始め
た。
そして、怪しい物は存在した。
「やきたての天ぷら」
ただの屋台か。最初はそう判断した。あい続いていたM社の攻撃のせいで、私
の精神は鋭敏さを失っていたようだった。しかし運転手のS氏ははっきりと異常
を感じ取っていた。
「・・・・ねえ、天ぷらって、揚げる物だよねえ・・・・?」
確かにそうだ。天ぷらがポルトガルから来たのかコートジボアールから来たの
か正確な記憶はないが、とにかく油で揚げる物であるという事実に代わりはない
だろう。それとも、ここ沖縄では、もしかして「焼く」と「揚げる」は同じ「やく」とい
う単語で表すのだろうか?もしそうだとしたら、焼き肉もフライドポテトもクッキーもサーターアンダー
ギもカクセイザイもヒツジウシも同じ調理法ということになってしまう。ん、何か変なのが入ったような・・・・
そのときは滴の襲撃を受けるおそれがあったために、早々にその場を立ち去っ
た。後に、沖縄首里に生息して20数年になるG氏に「やく」の意味を確認した
ところ、『「焼く」と「揚げる」が同じ意味な分けないさー』と一蹴されてしま
った。では、やはり「やきたての天ぷら」というのは、焼いて作った天ぷらなのだろ
うか。非常に興味のあるところである。
しかし、その後の諸事情は、私に「やきたての天ぷら」の現物を確認させる
ことを未だに許してはいない。
なお、「やきたての天ぷら」に気を取られている間に、我々は不覚にも滴の
攻撃を受けてしまった。卑劣にも滴は、直上からの急降下攻撃を仕掛けてきたら
しい。
そのために、車の所有者でもあるS氏は、洗車のためにガソリンスタンドに出
向く羽目になった。
場所:那覇市開南
交通:那覇BTから開南経由のバスに乗車、開南下車