都会の泉

 最近ネットニュースの「okinawa.chat」で話題になっていることの一つに、「沖縄の地名」というのがある。今回はその中から、筆者自身がぶっ飛んだ経験のある湖について紹介しよう。
 今から2年と少し前のこと。当時IABP本部は中部地方のとある山の麓から沖縄へ移転する真っ最中であり、私はその最高責任者として忙しい毎日を送っていた。それ以前に、本部移転地選考のために沖縄を訪れたとき、私は何者かの陰謀によって右も左も解らない正体不明の交差点に放り出されてしまったことがある。あれはきっと、沖縄を北部太平洋における軍事拠点として利用しているアメリカ軍がCIAと結託してしくんだ罠だったのだろう。そのようなことが二度と無いように、私は地図を購入して、あらかじめ沖縄の道路事情を把握しておくことにした。現在はどうだか知らないが、当時日本国内における沖縄への関心は著しく低く、沖縄の地図をおいている書店は少なかった。ようやく見つけだしたのが、大手昭文社が発行する有名な都市地図シリーズの「那覇市・沖縄県全図」であった。
 私は早速その地図を調べ始めた。その結果、那覇市は予想以上に狭いことが判明した。旧IABP本部のあるS市と大して変わらない。このような狭いところに30万もの人間が詰め込まれているのかずいぶん窮屈な街だ、と地図の下の方に目を落とすと、そこには湖があるらしかった。なるほど、これが都会の中のオアシスというやつか。そう想像した私は、一時夢心地の気分に浸っていた。だが、次の瞬間、その気分はうち砕かれてしまった。

漫湖

・・・・なにこれ、・・・・何て読むの、・・・う、うなぎこ?変わった地名だねえ・・・・さすがは沖縄だ・・・・ウナギが捕れるのかな ・・・・
等という考えが私の頭の中を駆けめぐった。もちろん、目の前にある現実を振り払おうとしての所行である。だが、斜体漢字の下に記されていた5文字のアルファベットは、私のそんなみすぼらしい努力を一瞬のうちに瓦解させてしまった。そう、残ったのはただ現実・・・・
 しばしの空白の時を経て意識を取り戻した私がまず考えたことは、「このような土地にIABPの本部を移転させてしまって本当にいいのだろうか。もしかしたら、崇高なIABPの思想体系が骨抜きにされてしまうのではないだろうか・・・」という危惧であった。しかし、たかが地名である、杞憂である、と気を取り直し、当初の予定通り移転作業を続行した。もちろん、この地名の事実は周りの人間には伏せていたが。


あれから数年の時が経った。私も、このような地名に特に違和感を覚えなくなってきた。だが、当時抱いた危機感は、今まさに現実のものとなろうとしている 。もちろんこの地名のせいではないのだが・・・・


場所:那覇市古波蔵、小禄
交通:那覇BTから沖縄バス糸満方面に乗車、古波蔵か大橋前で下車



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